馬路村の森林鉄道を訪ねて--
馬路村の森林鉄道を訪ねて
鉄道は日本全国をくまなく走っているように見えますが、その全てが接続、連絡しているわけではありません。
大型時刻表にも姿を表さない全く孤立した鉄道も存在します。
専用鉄道とか呼ばれるものがそうです。
鉱山から鉱石を運びだすため、あるいは森林から木材を運び出すことなど様々な産業の運搬を担うことを目的に作られた鉄道です。
かつて自家用車が普及する以前には、それらの従業員及び家族が利用する客車列車も存在しました。しかし今は本来の貨物輸送も大型トラックやベルトコンベアー等に取って代わり森林鉄道にいたっては、絶滅状態です。
そんな滅びゆくものへのノスタルジーに惹かれ、また普通の鉄道とは違った強烈な個性に惹かれ、こうした専用線をこよなく愛する鉄チャンもいます。
私の友人、N川氏もそうです。
20年以上も前のことになりますが、N川氏と北海道や、東北の専用線巡りをしました。
前述したように、その多くが、大型時刻表にも姿を表さない全く孤立した鉄道ですから、レンタカーを借りて訪問して廻りました。
二人とも独身貴族だったからできた贅沢です。
しかし、当時、情報は少なく、地図上に載せられた線路だけを目当てに探してゆくだけということも多く、もはや手遅れ、廃線となり跡形もなくなってしまっていたことも多くありました。
それでも、ちょうどなくなってゆく過渡期でもあったことで、放置された機関車やトロッコなどを撮影することも出来ました。
一喜一憂しながら旅したのも懐かしい思い出です。
そんな画像もいずれご紹介しようとは思っていますが、今回はつい先頃N川氏と訪問した馬路村のお話をさせていただこうと思います。
馬路村は高知県東部、徳島県との県境に近いところにある小さな村です。
かつては森林から伐採される豊かな木材資源に恵まれ、森林鉄道もあみの目のように張り巡らされていました。
ですが、ご当地も例に漏れず林業は衰退、森林鉄道も全廃されてしまいました。
でも馬路村は、村おこしに力をいれ、活性化を図っています。
そして村に残された鉄道遺産を復活させ、観光にも力を入れようとしているのです。
その保存鉄道は、JTBキャンブックの「知られざる鉄道」にも取り上げられていて、そのユニークな車両たちを見るにつけても、是非訪ねてゆきたいものだとかねてから思っていました。
しかし、如何せん遠い!!加えて馬路村へは車で行くしかないのです。
費用もかかるということで、なかなか訪ねてはゆけませんでした。
そんな折、この春から土日の高速道路上限1000円となったではないですか。
ただ、ウチの車は、今や女房専用車となり、ETCも付いていません。
他力本願もいいところですが、N川氏からのお誘いを心待ちにしていたのです。
すると、私の心を見透かしたかのように、N川氏からお誘いの電話がかかってきました。二つ返事で「行く行く!!」と応えたのはいうまでもありません。
日帰りです。
我が家をまだ暗い早朝に出発、N川氏とは大阪市内の北浜で待ち合わせて、阪神高速、山陽道、そして瀬戸大橋経由で四国へと向かいます。
N川氏は仕事柄、出張が多いのですが、ここ数年来、取扱商品である大形機械をトラックに積み込み、自ら営業にメンテナンスにと日本全国を駆け回っています。
そんなわけで「長距離ドライブは慣れている」というのですが、そのほとんどを彼に運転してもらっているので、申し訳ないというか本当に有り難い存在です。
高速道路は、早起きした甲斐もあってさほどの混雑もなく、予定通り快調に四国山地を越えてゆきました。
そういえば、今回特に凄いと思ったのはこの区間です。JR四国なら土讃線区間となるところですが、あの2000系でさえ、結構乗りごたえのあるこの区間を意外なほど早く駆け抜け南国ICに到着しました。
後免駅前のコンビニで、食料などを調達し、ついでに土電の撮影もしたのですが、9時50分でした。大阪からここまで4時間ほどです。(デジカメは便利ですね。正確に時間も記録できます。)
ここからは一般道ですから、なかなか距離は稼げません。でも国道55号線は眺めがいいのです。好天にも恵まれ、春の陽射しに美しく映える、その海を眺めながら、快適なドライブです。
安田から左折。安田川沿いに馬路村へと向かいます。谷間を走りながら、森林鉄道の廃線跡らしきものを発見しながら馬路村へとアプローチします。
いよいよ馬路村の中心部へ…というところで、誘導の係らしき人に車を止められました。
どうやら今日は村でイベントがあるらしく、その駐車場に誘導しようとしているのです。
なんのイベントかと思ってチラシを見てみると、馬路温泉30年祭とあります。
ライブにマジックショー、宝探しにアマゴのつかみ取りと盛りだくさんです。
そしてその中には、お目当ての森林鉄道とインクラインが無料!とあるではないですか。
記念の切符が手に入らないなあとは思いましたが、
これもきっと何かのお導きと駐車場(小学校の校庭)に車を駐め、いそいそと会場(森林鉄道は、そのすぐそば)に向かいます。
まずはインクライン(水力ケーブルカー)に乗車します。
普段なら300円。斜長距離92mを5分かけて昇ります。
はるか昔の「鉄道ファン誌」に外国にもこのようなものがあると載せられていたのを記憶しているのですが、日本では唯一の存在です。
インクラインは、山上駅でケーブルカーのタンクに注水し、その重みで山麓駅にいるバランスウエイトを上昇させるというエコでシンプルなものです。
でも、実際は、どれだけの乗客がいるかで注水量も加減しなくてはなりませんし、
停止させる際のブレーキも加減しなければ激突してしまいます。
乗務員さんが、バルブのようなものを回してこれを操作しながら、山上駅と向かってゆきます。
下山する折には、やはり注水するのですが、あとから駆け込んできたお客さんがいれば、その分、水を捨てます。のんびりしたものです。
でもそのせいで山上駅にゆこうとするお客さんは足止めを食うことになります。
今日は、無料ですから、下山したときには、結構な行列になっていました。
次は森林鉄道です。 でもこちらは、SLに似せたDLがトロッコを改造した客車を牽引するもので、距離もたいしたこともなく、まあ言ってみれば遊園地の遊覧鉄道に近いものです。ただ支流沿いに深い谷あいを走っていきますので、ムードは抜群、十分森林浴気分を味わえます。
本物の森林鉄道のイメージを伝えているのは、同じ馬路村でもなお奥まったところにある、魚梁瀬森林鉄道です。
こちらも、同じく保存鉄道ですが、貴重な機関車たちが、大変いい状態で保存されていて、マニアには必見の森林鉄道です。
こちらは例のイベントとは関係がないので、もちろん乗車するのは有料です。
お客もほとんどおらず、我々が乗車することで運行することになった列車を撮影しようとする先客のカメラマンが一人いるだけでした。
こちらは公園の外周を一周するだけなので景色はたいしたことはありません。
ただ、希望すれば、機関車の運転体験が出来ます(もちろん有料)ので、ぜひお試し下さい。いわゆる普通の鉄道の運転とは全然方法も感覚も違います。
この公園内にも日帰り温泉があります。先だってのイベント会場近くの温泉まで戻れば入浴も無料ですが、ひなびた感じを味わいたかったので、こちらの温泉に浸かって帰ることにしました。
帰りは、おみやげにエチオピア饅頭(国道55線沿いで後免駅近くの道沿いにある。広末涼子もたべたとか。本場エチオピアの駐日大使も感激したという。)を購入し、高松自動車道 SAで、讃岐うどんを食べて帰阪しました。
充実した一日でした。
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